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成年後見について

成年後見制度について

成年後見制度について

誰しも年を重ねるにつれ、判断力が衰えてしまうことがあります。また突然の事故や病気のために、障がいを抱えてしまうこともあるかもしれません。想像するとつらいですが、そんな時でも、自分のことは自分で決めたい、と考えるのは自然なことではないでしょうか。判断力の衰えによって、不当に不利益を受けることはあってはなりませんし、自分で決めるためには誰かの支えが必要になることもあるかと思います。
高齢になっても、障がいがあったとしても、それまでと同じように暮らしていける、そんな社会の実現を目指して成年後見制度は誕生しました。

制度の必要性

制度の必要性

認知症などによってご自身の判断力に不安が生じ始めると、日々暮らしていくためには誰かの支えが必要になることがあります。多くの場合、周りの家族やご親族が本人を支えておられることが多いと思いますが、これにも限界があるのもまた事実です。
遺産分割協議や不動産の処分など、大きな財産に関する契約行為がその代表例で、たとえ家族であっても代わりに契約するというわけにはいきません。
そんな時は成年後見制度のご利用を検討してみてください。制度をご利用すればすべてうまくいくとまでは申しませんが、心配ごとは減ると思います。成年後見人などは法律で定められた本人の支援者です。一定の権限の範囲内で、本人の意思を尊重しながら、本人を保護し、支援することが仕事です。

制度のあらまし

制度のあらまし

成年後見制度は「法定後見」と「任意後見」のふたつに分かれます。
法定後見は、すでに判断能力の衰えてしまわれた方のための制度、任意後見は、今は元気だが将来の能力の衰えに備えておきたいといった方のために用意された制度と言えます。
法定後見は家庭裁判所に対する申立てにより、任意後見は「契約」により、ご利用できることになります。

法定後見について

高齢や障がいが原因で物事をしっかり判断できなくなった方を支えるために、家庭裁判所を通じて本人の支援者(成年後見人など)を選任し、以後支援者が本人の意思を尊重しながら、本人の生活を支える仕組みです。
法定後見制度は、本人の有する能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型に分けられており、類型により支援者の仕事の範囲も異なります。
制度をご利用するためには家庭裁判所に申立てを行う必要があり、本人、配偶者、4親等内の親族などが申立てを行います。

申立てにあたって

制度をご利用するには家庭裁判所に対して「申立て」を行う必要があります。ここでは、3人の登場人物を中心にしながらご説明いたします。

本人

本人

支援を受ける人です。

成年後見人など

成年後見人など

支援する立場の人です。

申立人

申立人

家裁に申立てを行う人です。

本人について

法定後見は、ご本人の判断能力の程度に応じて、3つの類型に分けられています。ですから申立てを検討する場合、ご本人がどの類型にあてはまるかをまず考えなくてはなりません。買物を例にして表にしましたので少し考えてみてください。

類型 本人の判断能力
後見 支援を受けても、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない。
保佐 支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない。
補助 支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することが難しい場合がある。

上記の例はあくまでも参考程度です。実際は微妙な部分もありますから、申立てでは後見専用の診断書を使って医師の助言を仰ぐことになります。どの類型を選択するのがご本人にとって最善なのか、全体の状況を見ながら判断していくことになります。

成年後見人などについて

つぎは誰に支援してもらうかを考えなくてはなりません。身近に本人の良き理解者(家族など)がいらっしゃればその方が一番でしょう。身近に適当な方がいない、あるいはいてもかなりのご高齢で、支援が難しいということでしたら、後見業務を職業として行っている司法書士や社会福祉士、弁護士といった人(専門職後見人)に依頼する方法もあります。

また、適当な支援者(候補者)が見つからない場合は、そのまま申立てを行うことでよいと思います。その場合は、家庭裁判所が、事案に応じて適任者を選任することとなります。

支援者を誰にするかという事項は、最終的には裁判所が状況全体を見ながら決めることになります。必ずしも希望どおりの人選がなされるとは限りませんので、ご留意ください。

後見の類型についてはすでにご説明しましたが、それぞれの類型ごとに支援者の呼び名や、仕事の範囲(権限)が違っております。大雑把な言い方になりますが、本人の持つ能力が小さいほど支援者の仕事の範囲(権限)が大きくなる仕組みをとっています。

類型 支援者の呼び名
後見 成年後見人
保佐 保佐人
補助 補助人
成年後見人の仕事

成年後見人は、本人の生活に配慮しながら、本人の代わりに必要となる法律行為をするのが仕事です。本人の貯金や不動産などを管理したり、各種の費用を支払ったり、介護や医療に関する手続きをしたりといった具合です。また本人がよくわからないまま、不利益な契約を交わしてしまった時などは、それを取消すことも重要な仕事です。

どの類型にも当てはまりますが、ご本人の置かれた状況によっては、支援者の仕事の負担が相当程度重くなることがあります。自ら引き受けるにせよ、誰かに依頼するにせよ、その点は十分考慮しなくてはなりません。支援者を複数置いたり、専門職への依頼を検討すべき場合もあるでしょう。

保佐人の仕事

成年後見人の仕事が本人の生活全般に及ぶのに対し、保佐人の仕事の範囲はもう少し限定的です。まず、成年後見人のように本人の代わりに行う(代理権といいます)という形ではなく、本人の行為に同意を与えるというのが原則的な仕事となります(同意権といいます)。本人が保佐人の同意なしに行った不利益な契約は、後で保佐人が取消すことができ(取消権といい、一定範囲の契約が対象です)、その取消権があることで、本人の保護が可能となるというわけです。
保佐人が同意したり取消したりできる本人の行為の範囲は、法律で定められており、重要な財産行為などがそれにあたるのですが、長くなるので詳しくは触れないことにします。

すでに申しましたとおり保佐人の同意権の対象は、一定範囲に限られておりますから、それだけでは本人の支援という点からみて不十分という場合があります。むしろ実際はそのほうが多いかもしれません。そんな時は、同意ができる行為の対象を増やしたり、特定の行為に関して、成年後見人のように保佐人が本人に代わって契約などを行う権限(代理権)を付与することも可能です(保佐人が代理権を持つには本人の了解が必要となります)。特にご本人のお身体が不自由で動き回ることが難しいなどのご事情がある時や、各種福祉サービスのご利用、重要な財産行為などを予定している場合は、必要となる行為に関する代理権がないと満足な支援ができないことになりかねません。
ですから保佐の類型をお考えになる時は、代理権についても十分検討しなくてはなりません。

補助人の仕事

基本的な職務の態様は保佐人に似ており、やはり同意権や取消権の行使という形で本人を支援します。ただし、補助類型では、ご本人の有する能力が比較的高いわけですから、本人の意思(自己決定権)がより重視され、支援者の仕事の範囲は保佐類型よりもさらに小さくなります。
保佐人の同意権・取消権の対象となる本人の行為については法定されていると申しましたが、補助人はその法定行為の中の一部についてのみ同意権や取消権を持つことになります。ですからどの部分を同意の対象とするのか、あらかじめ決めておく必要があります。保佐類型のような同意権の拡張はできませんが、代理権の付与は可能ですので保佐同様、検討が必要です。
補助の類型では、申立、同意権の付与、代理権の付与のすべてについて本人の了解を必要としますから、ご本人とよく話し合うことが大切でしょう。ご本人が申立てに反対のご意思をお持ちの場合は制度をご利用することはできません。

その他の留意点

成年後見人にできないこと

※誤解の多いところですが、掃除・洗濯・買物・食事の支度といったこと(事実行為といいます)自体は仕事とはなりません。
それが必要であれば、それらのサービスをする人の手配をすることが仕事となります。
※本人の婚姻や養子縁組を代わりに行うことはできません。
※医療行為に対し、本人に代わって同意する権限はないとされています。
※本人と支援者の間で利害が相反する(恐れのある)行為はできません。例えば、両者がともに相続人である場合に、本人の代わりに遺産分割協議をしたりすることなどがそれにあたります(特別代理人選任手続き又は監督人の代理が必要です)。
また成年後見人が本人の保証人となることも適切ではないでしょう。
※本人の居住用不動産の処分については成年後見人の判断のみで行うことはできず、家庭裁判所の許可を要します。
※日用品の購入など日常生活に関する本人の行為については取消すことはできません。

保佐人・補助人について

※取消権を行使できるのは、ご本人が、同意権の対象となっている行為を、保佐人などの同意を得ずに行った場合に限られます。
※日用品の購入など日常生活に関する本人の行為は取消すことはできません。
※本人の「意思の尊重」と、「本人の保護」は互いに相反することがあり、このバランスは非常に難しいと思います。
特に代理権について考える場合、どこまで支援するかという点については状況全体を見ながら、ご本人とよく話し合う必要があります。

申立人について

申立てできる人

申立てを行うことができる人は、一定範囲の家族やご親族などに限られております。
具体的には、本人、配偶者や子ども、親、兄弟姉妹、叔父・叔母、甥・姪…といったご本人の四親等内の親族などと決められております。
申立人と支援者(成年後見人などの候補者)が同一人ということもあるでしょう。

どこに申し立てるのか

ご本人(支援を受ける方)の住所地を管轄している家庭裁判所です。

申立てに際しては申立書や各種の資料を家庭裁判所に提出する必要があります。必要書類は各裁判所によっても多少の違いがありますので、何が必要となるのか、申立先の家庭裁判所に問い合わせるのがよいでしょう。
手続き自体は以前に比べ簡略化されてきておりますが、こういった手続が初めてという方にとっては、戸惑うことも多いかもしれません。
もし難しく感じるようでしたら、当事務所までお問い合わせくださっても結構です。手続き全般についてのご相談や申立書類の作成などを承っております。

任意後見について

任意後見について

将来の判断能力の衰えに備えて、契約で、将来自分を支援してくれる人をあらかじめ選んでおくというものです。契約ですから、誰に支援してもらうか、また何を支援してもらうかについて、支援者となる人と話し合いながら自らの意思で決めることができます。

「今は元気だが、この先のことが心配」といった時にご利用を検討してください。身寄りがなく、老後の生活や財産管理に不安を抱える方にとっては有用な制度ですから、是非知っていただきたい制度です。

法定後見との違い

ごく簡単に申しますと、
法定後見は、判断能力が衰えた後、裁判所で、支援者を選んでもらう制度です。
任意後見は、元気なうちに、契約で、将来の支援者を決めておく制度です。

ですから「自分でしっかり選べる」という点が、任意後見の一番のメリットと言えるでしょう。

契約の方法

公正証書で契約を結びます。

支援の対象

本人の判断能力が不十分になった時の、本人の生活、療養看護、財産の管理に関する法律行為を対象としています。
具体的な支援者の仕事は契約の中で定めることになります。

支援のかたち

契約で定められた事項を、本人に代わって支援者が行う=「代理する」というかたちです。
契約内容にもよりますが、、本人のために各種の契約を結んだり、費用を支払ったり、預貯金を管理したりといった具合です。
法定後見のような「取消権」による支援はできないと言われております。

支援の開始時期

公正証書で契約しただけでは、支援は始まりません。契約後、ご本人の判断能力が不十分な状況になった時に、家庭裁判所に対して任意後見監督人(支援者の仕事をチェックする役目を与えられた人)の選任申立を行い、その審判が告知されてはじめて、契約の効力が生じ、支援がスタートします。

用語のご説明

本人=将来支援を受ける人のことで任意後見契約では委任者と呼んでいます。
任意後見契約受任者=将来ご本人を支援する人のことで、契約の効力が生じた後は「任意後見人」と呼びます。
任意後見監督人=任意後見人の事務を監督する立場の人で、家庭裁判所において選任されます。

ご利用のしかた

任意後見のご利用方法は3種類あると言われております。ご自身の状況に合わせて選択することになりますので、参考にしてみてください。

【1】将来型

最も基本的なご利用形態になります。元気な時に任意後見契約を交わし、将来委任者(ご本人)の判断能力が低下した時点で家庭裁判所へ任意後見監督人の選任申立を行い、任意後見人による支援を開始するというものです。同居の家族などのご本人にとって身近な方が任意後見受任者になる場合はこのかたちが多いようです。

【2】移行型

任意後見契約+みまもり契約
司法書士などの専門職や普段ご本人と接する機会の少ない方が任意後見受任者となる場合では、ご本人の様子を知る機会は限られておりますので、適切な時期に任意後見監督人の選任申立を行い、任意後見契約をスタートさせることが難しいという問題点があります。そこで任意後見契約とは別にご本人と「みまもり契約」を結んで定期的にご本人と連絡をとりながら、支援開始時期を判断しようとするものです。

任意後見契約+財産管理等の委任契約(+みまもり契約)
すでにご説明しましたとおり任意後見契約での支援は、将来委任者(ご本人)の判断能力が実際に低下しなければスタートすることはありません。ですがお心はしっかりされていても、ひとり暮らしであったり、お身体が不自由で、日々の財産管理や各種手続きをご自身ですることが難しいといった場合は、すぐに支援を受けたいとご要望されることもあるかと思います。そんな時は任意後見契約とは別にご本人と「財産管理等の委任契約」を結んで、任意後見契約がスタートするまでの間、財産管理や各種の事務を代理することが可能です。(任意後見契約が効力を生じた時は財産管理等の委任契約は終了する条項を入れることになります)

任意後見契約がスタートした場合は家庭裁判所で選任された任意後見監督人が支援者(任意後見人)の仕事ぶりを監視できますが、財産管理等の委任契約の場合は、支援者(任意代理人)の仕事を監視できるのはご本人しか存在しません。ですから支援者は慎重に選ぶ必要があります。残念なことですが、任意代理人の立場をご利用した不正事件も過去発生しています。

※ここでは任意後見契約がスタートする前の支援者を→任意代理人と呼んでいます。
※任意後見契約がスタートした後の支援者は→任意後見人と呼んでいます
※両者は同一人となることが多いですが、異なる立場で支援しておりますので区別が必要です。

【3】即効型

これは任意後見契約締結後すぐに任意後見監督人の選任申立を行い、支援をスタートさせるものです。ご本人にすでに判断能力の低下がみられる場合でも、その程度が軽く、任意後見契約を締結させられるだけの能力が備わっている方を対象としています。
ただし、当事務所ではこの形態は通常おすすめしておりません。任意後見契約はそれほど単純な契約形態ではございませんから、ご本人が契約内容をきちんと理解されていらっしゃるかの判断が難しく、後でトラブルに発展する恐れもないとは言えないからです。ですからこのようなケースでは、法定後見の保佐・補助類型のご利用をご提案しております。