遺言のはなし

 

 最近は財産の多寡にかかわらず、遺言を書きたいと考える方が増えてきており、私自身はとても良いことだと思っております。昔から相続は「争族」とも呼ばれますように近親者間のトラブルの種で、これを未然に防ぐ方法の一つとして遺言が使われているからです。 遺言は一定の法的な約束事(この点は重要ですが)さえ守れば、思いのほか手軽に書けるものであります。ですが反面に、考え出すときりがないくらい奥深いのもまた事実で、私などはそう感じております。

 誤解を恐れずに申しますと、そもそも「完璧な内容の遺言」というものは存在しないのでははないでしょうか(結果的に「完璧だった」ということはあるかもしれませんが)。実際に遺言を書いてみたご経験があれば理解いただけるかと思いますが、遺言を書くにあたっては、自身の人生の最後の状況を予想して、仮定を立てながら書いてゆくという作業になります。ですが必ずしも想定どうりの状況で最後を迎えることができるとは限りません。ご自身の財産に大きな変動があったり、遺産を譲りたいと考えていた人が先に亡くなったりと、何が起こるか誰にも分からないのが現実です。場合によっては変化のあった状況に合わせて、遺言を書き換える必要に迫られることもあるかもしれませんし、実際そういったことはよくあるのです。書き換えができるうちはまだ良いのかもしれませんが、それもご自分がお元気で、お心もしっかりなさっていればの話です・・・。少なくとも遺言は一度書いたら安心という類のものではないことは確かなようです。

 

 
そうしますと遺言作成にあたってできるのは「できるだけ完璧な内容に近づける」という作業になりますし、それを高いレベルで求めようとすると難しく感じてしまうというわけです。

 なんだか面倒な話になってしまいましたが、遺言を書きたいとお考えの方の気力を削ぎたいわけでは決してございません。最初に申しましたとおり、少し注意は必要ですが案外手軽に書けるものですし、有用であることに変わりありません。もし困ったなら、専門家にアドバイスを求めればよいのです。


 仕事柄、相続に関するお悩みごとをお聞きする機会は多いのですが、その際に、亡くなられた方が遺言を残していればきっと解決したと思われるケースも少なからずございます。「時、すでに遅し」ですが思いは複雑です。生前に遺言を書いておいたほうがよい場合というのは確かにございますから、次にその点をご説明したいと思います。

 

こんな時は遺言を。

遺言を残すか否かはご本人の自由です。ですがこんな場合はぜひ検討してみてください。将来、周りの方のお悩みごとが減るかもしれません。

 

 相続人になるべき人がいないとき。

 自分の死後、残された妻(または夫)の生活に不安があるとき。

 夫婦の間に子がなく主な財産が自宅だけであるとき。

 息子が死んだ後も、介護してくれた息子のお嫁さんがいるとき。

 先妻の子と後妻がいるとき。

 内縁の妻や夫がいるとき。 

 家業を継ぐ子に事業用財産を相続させたいとき。

 障害を持つ子に財産を多めに相続させたいとき。

 行方の分からない推定相続人がいるとき。